——【実践編】経営方針から導く推進方針・目標・KGIが、本当に機能しているか

前回は、4つの壁に共通する根っこは、健康経営が「担当者任せ」になっていることだとお伝えしました。経営方針から導いた推進方針・目標・KGI(目標の達成度を測る指標)が出てこないのは、担当者の努力不足ではなく、仕組みの問題です。
では、担当者は何から始めればよいのでしょうか。新しい年度の計画づくりが、これまでの進め方の延長になっていないか。今回は【実践編】として、計画に入る前に点検したい「3つの問い」と、経営層に話を持ちかける最初の一言を紹介します。大きな改革ではなく、自分の持ち場からできる一歩です。
この記事でわかること
- 新しい年度の計画の前に、点検したい3つの問い(「はい」と答えた場合も含めて)
- 経営層に話を持ちかけるときの、最初の一言の考え方
- 自分の持ち場からできる、最初の一歩
目次
1. 新しい年度の計画の前に、点検したい「3つの問い」
4月始まりや1月始まりの会社では、これから新しい年度の計画を立てる時期を迎えます。ここで、前年の計画を見直して、今年は何をやるかを決め直すだけでは、これまでの進め方の延長です。延長で見直しても、手応えは変わりません。
点検したいのは、計画の土台です。毎年の計画が、経営方針から導いた推進方針・目標・KGIのもとで進んでいるか。次の3つの問いで、確かめてみてください。
| 問い | 「はい」と答えても確認すること | 「いいえ」の場合の一歩 |
|---|---|---|
| ① 経営方針から導いた、推進方針・目標・KGI(3〜5年)はありますか | ガイドブックを真似た文章を書いただけになっていないか。この内容で進めれば、自社の経営方針の実現に貢献し、生産性やワーク・エンゲージメントの向上につながると言えるか | 毎年の計画の見直しの前に、経営方針を実現するための健康経営を描くことに取り組む。経営層に、経営方針から描くことを提案する |
| ② 今展開している施策は、KGIに近づいていますか | 施策の達成率や参加率だけで判断していないか。KGIの動きで説明できるか | その施策はKGIに貢献していない。貢献する施策に入れ替える |
| ③ 経営者は、健康経営が経営方針を実現する取り組みだと、腹落ちしていますか | 経営者との話し合いの中身が、産業保健の報告にとどまっていないか。企業価値の向上につながる健康経営になっているかを、話し合えているか | 経営方針と連動した健康経営に取り組めていないと感じたら、経営者との15分の相談の場をつくることから始める |
問い①では、「はい」と答えても、立ち止まって確認することが大切です。形を整えただけの状態では、「ある」とは言えません。
問い②で大切なのは、目的と手段を取り違えないことです。目的は、施策をやることではなく、KGIを達成することです。施策は、そのための手段です。
問い③で確かめたいのは、産業保健の報告をすることではありません。産業保健は守りの土台として大切ですが、ここで問うのは、健康経営が経営方針を実現する取り組みになっているか、という話し合いです。
「いいえ」が多くても、心配はいりません。それは、変えられる余地が大きい、ということです。3つの問いは、次の一歩を選ぶための地図になります。
2. 経営層に話を持ちかける、最初の一言
問い③が「いいえ」の場合や、話し合いが産業保健の報告にとどまっている場合、最初の難関は、経営層に話を持ちかけることです。ここでは、3つのポイントをお伝えします。
① 施策の報告ではなく、経営方針の話から入る
前回までお伝えしたとおり、経営者の壁は、届ける言葉が見つからない、という翻訳の課題です。調査票や施策の報告から入ると、「担当部署の作業の話」として受け取られがちです。経営方針の話から入ると、経営者の関心と重なります。
切り出しの例を挙げます。
施策の報告の前に、健康経営が当社の経営方針の実現につながっているか、15分だけ相談させてください。3〜5年後にめざす姿を、一緒に確認したいのです。
② 小さな場から始める
いきなり「推進体制を変えましょう」と言う必要はありません。「15分の相談」のように、小さな場から始めます。場ができれば、次の話につなげられます。
③ 悩みを持ち寄る
担当者が一人で働きかけるより、同じ壁を感じている人と一緒に動く方が、現実的です。経営に近い立場の方(会社によって、人事、経営企画、総務などが当たります)と、悩みを持ち寄ってみてください。「うちの会社でも、同じように感じている人がいる(健康経営という言葉になったけれど、産業保健を強化こそすれ本質的には変わっていない)」とわかるだけで、話しやすくなります。
3. 自分の持ち場からできる、最初の一歩
経営層との場が持てなくても、担当者が自分の持ち場からできることがあります。
施策を、KGIの目で見直す
今ある施策を一覧にして、それぞれが、どのKGIにつながるかを一行で書き出してみてください。つながりが書けない施策は、見直しのヒントです。経営方針から導いたKGIがまだない会社では、「この施策は、どんな状態をめざしているのか」を書き出すだけでも構いません。
産業保健を、自社に合わせて整える
守りの土台である産業保健を、自社の働き方や社員構成に基づいて整えます。産業保健のメンバーは、守りに集中してよいのです。
「経営方針から描く」考え方に触れておく
当社は、経営方針から推進方針・目標・KGIへと逆算し、そのうえでKGIに近づく施策のPDCAを回す設計図として、『健康経営戦略フロー図』(ガイドブックでいう戦略マップ)を無償公開しています。使い方のガイドラインと事例は、特設サイトで順次紹介しています。経営層との対話の前に目を通しておくと、「何をどう話せばよいか」の手がかりになります。
KGIに近づく施策を計画的に進める実行プランとして、『健康風土醸成ロードマップ』も無償公開しています。詳しくは、健康風土事業のページをご覧ください。使い方は、10月号で詳しくお伝えする予定です。
どちらも、ご利用の際は、クレジット表記をお願いしています。
「健康経営戦略フロー図(橘田孝モデル)/ノストライフ株式会社提供」
「健康風土醸成ロードマップ(橘田孝モデル)/ノストライフ株式会社提供」
4. まとめ:一歩目は、小さくていい
新しい年度の計画を、去年の延長にしないために、担当者ができることは、3つの問いで計画の土台を点検し、施策をKGIの目で見直し、経営層に小さな場で話を持ちかけることです。
一歩目は、小さくていい。15分の相談から始まる変化もあります。
疲れを感じるのは、本気で取り組んできたからこそです。その気持ちは、会社を変える力になります。
【次回のブログでは】
今回の連載の最後に、代表の橘田から、「形を整えるか、本質を整えるか」という問いをお届けします。編集後記として、3本を振り返りながら、新しい年度に向けた思いをお伝えします。
<Let us hear from you>
3つの問いのうち、「はい」と答えたあとの確認で引っかかったものや、「いいえ」だったものはどれですか。番号と、その背景を、お問い合わせからお知らせください。また、『健康経営戦略フロー図』や『健康風土醸成ロードマップ』を使ってみたい方は、ぜひお声がけください。
橘田 孝(ノストライフ株式会社 代表)。制御機器メーカーで35年にわたり、経営企画、M&A、人材戦略などを担当。経営者や経営企画の視点から、各社の経営方針を実現する健康経営の伴走支援を行っています。