【NOSTブログ‣2026年10月 第3回】産業保健の重点事項も、同じ設計図へ。C社に見る進化形と、健康経営を経営の仕組みにする着地点

——【進化形・着地点編】攻めと守りを分けたうえで、同じ設計図でつなぐ

経営者、風土改革チーム、産業保健チーム、事務局が同じ海図を見て、重点を示す旗を確かめながら進むイメージ

前回は、簡易診断で設計図のたたき台を得て(A社)、伴走を受けながらKGIリーダーが回す(B社)という、風土改革チーム(第2層)の基本形をお伝えしました(第2回)。

8月号では、攻め(健康風土の醸成)と守り(産業保健)を分けて、それぞれに主役を置く考え方をお伝えしました(8月号の第3回)。担当者の視座からの整理は、9月号の第2回でお伝えしました。今回は、その先です。分けたうえで、同じ設計図でつなぐ「進化形」と、4層を1年で回す年間スケジュールの例、そして着地点をお伝えします。

この記事でわかること

  • 産業保健の重点事項を同じフロー図に入れる進化形の考え方
  • 4層を1年で回す、年間スケジュールの例
  • 認定や順位は結果であり、着地点は経営の仕組みであること

目次

  1. 分けたうえで、同じ設計図でつなぐ
  2. C社の進化形:産業保健の重点事項も、フロー図の中へ
  3. 4層を1年で回す:年間スケジュールの例
  4. まとめ:認定や順位は、結果としてついてくる

1. 分けたうえで、同じ設計図でつなぐ

攻めと守りを分けると、役割は明確になります。一方で、気になる点もあります。産業保健が、一般的な内容だけで進み、風土改革だけが、会社ならではの方向へ進むと、走る方向が分かれてしまうのではないか、という点です。

産業保健は、健康経営の基盤です。健康経営と呼ばれる前から、産業医や保健師などの専門職を中心に、従業員の健康管理を、企業の義務として、また積極的な姿勢として整えてきた分野です。ここは変わりません。毎年の標準的な産業保健活動(どの会社でも欠かせない、基盤となる活動)は、これからもきちんと続けます。産業保健の現場は、これまでも、自社の働き方や従業員の状況に目を配り、一人ひとりに向き合ってきました。そのうえで、風土改革がワーク・エンゲージメントの向上に力を注げるよう、産業保健には、健康問題による損失(プレゼンティーイズム・アブセンティーイズム)の予防と改善を、その会社ならではの働き方や従業員の構成に合わせて進めることが、いっそう求められます。守りが、その会社に合った形で整っているほど、風土改革は、やる気を高めることに集中でき、発展しやすくなります。産業保健は、風土改革を支える土壌です。

風土改革(第2層)と、産業保健(第3層)は、補い合う両輪です。産業保健という土壌があってはじめて、風土改革は回ります。そのうえで、産業保健の中の「この会社ならではの重点事項」を、風土改革と同じフロー図に描くことで、両輪が、同じ経営方針に向かって走ります(風土改革チームは経営方針に直接つなぎ、産業保健チームは、その健康経営を支えます)。この形が、進化形です。

2. C社の進化形:産業保健の重点事項も、フロー図の中へ

C社は、生活用品の卸売商社で、当社が現在も伴走支援を続けている会社です。B社と同じように、プロジェクトの中で『健康経営戦略フロー図』を描き、風土改革の展開を進めています。C社の特徴は、風土改革が産業保健という土台の上に成り立つことを、同じ図に明記したいという意思をもっていることです。いま取り組んでいるのは、このフロー図に、産業保健チーム(第3層)の、この会社ならではの重点事項を加え、両輪を1枚に描くことです。図の上段は風土改革チーム、下段は産業保健チームが担う内容を、それぞれ示しています。

C社は、「新しいリビングスタイルの架け橋になる」という経営理念のもと、人的資本投資の面で、健康経営に取り組む方針を決めました。お客様に暮らしを提案する私たち自身が、暮らしを楽しめていなければ、提案に説得力は生まれません。この考え方から、状態目標の一つとして、「仕事と暮らしに余白を持てている状態」を掲げています。

フロー図に描くのは、第2層と第3層です。経営層(第1層)と事務局(第4層)は、図には書きませんが、経営会議でのレビューや、調査票への反映を通して、両チームを支える役割として、背景にあります。次の表は、2つのチームの基本的な役割です。風土改革チームの役割は、第2回で詳しくお伝えしました。

生活用品の卸売商社C社の健康経営戦略フロー図。風土改革チームの展開に加え、産業保健チームの重点事項を並べる構成
流れ主役基本的な役割
攻め:健康風土の醸成風土改革チーム経営方針の実現のための「人的資本投資(組織・人の成長)」として、健康風土を醸成する。主にワーク・エンゲージメントの向上につなげる
守り:健康管理の充実産業保健チーム従業員と働き方の状況に応じた「コンディション・ケア」として、健康管理を充実させる。標準的な産業保健活動を展開したうえで、自社の働き方や従業員の状況を踏まえた「特に注力する分野」を定め、健康経営を支える。経営への報告も、その分野を中心に行う。主に、プレゼンティーイズム(出勤はしているが、健康問題のためにパフォーマンスが上がらない状態)やアブセンティーイズム(健康問題によって会社を休むこと)による損失の予防と改善に対応する

ただし、産業保健の活動を、すべてフロー図に書き込むわけではありません。標準的な対応は、フロー図には書かなくても、毎年きちんと展開します。フロー図に書き出すのは、自社の働き方、従業員の構成(年齢構成など)、従業員が抱える課題を踏まえた、「特に注力する分野」(この会社ならではの重点事項)です。3つ程度に絞って掲げます。経営への報告も、この重点事項を中心に行います。当社の支援の現場では、経営者の方から、「産業保健を強化し続けると、どこまでやればよいのか」というお声も聞かれます。際限なく広げるのではなく、標準的な対応を土台に、自社らしい分野を3つ程度に絞ることで、「どこに力を入れるのか」が見えやすくなります。

この形には、利点があると、当社は考えています。経営者にとっては、産業保健の報告が、経営方針の実現という同じ文脈に位置づき、コメントのできる話になります。担当者にとっては、守りの活動が、会社の方向性とつながる実感につながります。

3. 4層を1年で回す:年間スケジュールの例

4層をそろえたら、次は1年の回し方です。4層それぞれの役割は、第1回でお伝えしたとおりです。ここでは、その役割が1年の中でどう動くかを、例で示します。

層主な動き(例)
経営層①本年度の活動内容と予算を確認し、決定する。②四半期ごとに両チームから報告を受け、経営の立場から、意見、見直し、支援、判断、助言を行う。③社外(労働市場や資本市場など)に取り組みを発信し、社内には、社長メッセージやタウンホールミーティングで直接働きかける。④1年の結果をレビューし、新しい年度の活動を決める
風土改革チーム①年間の活動計画(単年度の施策、行動変容・KPI)を立て、ロードマップを展開する。②PDCAを回し、四半期ごとに経営層へ報告する。③年度の終わりに、KGIにつながっていない施策は見直し、入れ替えて、次の年度の計画に反映する
産業保健チーム①標準的な対応と、自社らしい分野への特化した対応を含む年間計画を立て、安全衛生委員会などで労使が確認したうえで、経営層も確認する。②PDCAを回し、四半期ごとに、特に自社らしい重点事項を中心に、経営層へ報告する。③年度の終わりに振り返り、次の年度の計画に反映する
事務局①経営層がレビューする経営会議や委員会などの仕組みを運営し、両チームの活動を支援・推進する。②1年の取り組みを、調査票に回答し、申請する。③フィードバックシートを分析し、経営層に報告する

各層の動きは、1年の流れの順に並べた例です。実施の月や回数は、各社の施策のタイミングによって異なり、このとおりにする必要はありません。なお、年間スケジュールは会計年度に沿って回りますが、調査票の回答時期は、会計年度とは別に決まっています。事務局は、この2つの時間軸をつなぐ役割を担います。大切なのは、4層の動きが1枚の年間スケジュールにそろい、経営の場で定期的に振り返られることです。

4. まとめ:認定や順位は、結果としてついてくる

健康経営優良法人の認定や順位は、めざす目的ではありません。経営方針を実現する変革の過程で、結果としてついてくるものと、当社は捉えています。

船にたとえれば、船長は経営者です。羅針盤であるウェルビーイング経営で進む先を決め、産業保健は、船が着実に出航するための桟橋として、土台を支えます。同じ海図を、4層の全員が見ている。それが、健康経営が経営の仕組みになった姿です。

担当者任せを卒業するとは、担当者を減らすことではありません。担当者が、全体を取りまとめる人として、経営と一緒に進めることです。

【次回のブログでは】
今月の連載の最後に、代表の橘田から、「あなたの会社の健康経営は、誰のものですか」という問いをお届けします。編集後記として、3本を振り返りながら、新しい年度に向けた思いをお伝えします。

<Let us hear from you>
4層のうち、あなたの会社でまず手を入れたいのは、どの層でしょうか。年間スケジュールを描くときに迷う点も含めて、お問い合わせからお知らせください。


橘田 孝(ノストライフ株式会社 代表)。制御機器メーカーで35年にわたり、経営企画、M&A、人材戦略などを担当。経営者や経営企画の視点から、各社の経営方針を実現する健康経営の伴走支援を行っています。

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