——【設計編】 健康管理の枠を破り、経営ツールとして戦略マップを使いこなす

前回のブログでは、健康経営が「人的資本経営」「サステナビリティ経営」を支える重要な土台であり、経営戦略そのものであることを解説しました。
今回は、その戦略を具体的に落とし込むための設計図「戦略マップ」について深掘りします。
ガイドブックのフォーマットに自社の施策を無理やり当てはめたり、他社の事例をそのままコピーしたりしていませんか?
戦略マップの本当の意味を理解すれば、それは最強の経営ツールへと変貌します。
目次
1.戦略マップへの苦手意識はどこから来るのか?
「健康経営優良法人」の認定に向け、戦略マップの作成に頭を悩ませている方は多いでしょう。
特に産業保健スタッフにとって、経営方針からKGI(最終目標)へと繋がるロジックを組み立てることは容易ではありません。
それもそのはずです。戦略マップの構造自体が、高度な経営ツールをベースに作られているからです。
2.戦略マップに隠された「3つの経営フレームワーク」
戦略マップをじっくり分析すると、以下のビジネスフレームワークが組み込まれていることがわかります。

経営ツール(BSC:バランススコアカードの戦略マップ):
もともと「戦略マップ」とは、経営ツールとして使われてきたフレームワークです。
自社の強み(バリュープロポジション)を最大化する戦略立案ツールという仕組みは、健康経営の戦略マップにも引き継がれています。
経理ツール(PL・BS、ROICツリー構造):
単年度の成果(フロー)をツリー構造で計画的に展開して、企業の財産(ストック)を増やす仕組みです。
健康経営でも、当初から経理(管理会計)の考え方に基づく「健康投資管理会計ガイドライン」という手法も紹介しています。
価値創造プロセス:
これは無形資産の価値を向上するための手法で、インプット(施策)からアクティビティ(行動変容)、アウトプット(KPI)、そしてアウトカム(KGI)へと至るプロセスです。
3.他社のマネが危険な理由(タクシー会社の事例)
戦略マップの構造が経営戦略(経営方針)の実現そのものであるならば、各社各様のビジネスモデルや強みがある以上、健康経営も「100社あれば100通り」になるのが必然です。
例えば、ガイドブックにある「運輸業(タクシー会社を含む)」の例では、経営方針を「安全にお客様を輸送する」、KGIを「睡眠で休養が取れている従業員比率の向上」としています。
その結果、KGIである「睡眠」に繋がる要素を分解したツリー構造に基づいた設計図になります。
健康施策が戦略マップの左側から、睡眠の改善に向かったPDCAサイクルが展開していきます。

しかし、もし自社が「インバウンド需要に応え、地域の魅力を伝えるアンバサダーとしての運転手」を強みとするタクシー会社であれば、目指すべきKGIは「睡眠」よりも、「ワーク・エンゲージメントの向上」や「従業員が大切にされていると感じるスコア(POS)」などが適切と言えます。
マネをして形を整えるだけでは、時間とお金のムダになってしまいます。

4.まとめ:
健康経営の施策(インプット)ありきでマップを埋めるのではなく、自社の経営方針(パーパスやミッション)を実現するために、どのような人的資本が必要で、どんな組織風土(アウトカム/KGI)を目指すのか。
自社の強みに直結した「独自のKGI」を描き出すことが、戦略マップ本来の役割です。
今月のブログの最終回となる次回は、【実行編】として、この戦略マップを「絵に描いた餅」にせず、組織全体で実行・運用するための仕組みづくりについて解説します。「4つの層」の連携と、NOSTが独自に提唱する「健康経営戦略フロー図」の活用法をご紹介します。
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