【NOSTブログ‣2026年6月 第1回】健康経営は「おまけ」じゃない。人的資本・ウェルビーイングと連動する最強の投資

昨今、多くの企業が「健康経営優良法人」の認定取得に向けて取り組んでいます。

しかし、現場では「健康管理(産業保健)の延長になっており、経営戦略と結びついていない」「人(従業員)に係わる他の部署から、産業保健メンバーが孤立している」といった悩みが尽きません。

今月の連載では、調査票を埋めるだけの「事務作業」から脱却し、本業を強くする「経営戦略」としての健康経営のあり方を、3回のシリーズで紐解きます。

第1回は、そもそも健康経営が企業全体の戦略の中でどのような位置づけにあるのか、「3つの経営」の構造から明らかにします。


目次

  1. 溢れる指針とガイドライン。自社の立ち位置はどこか?
  2. 「人を大切にする3つの経営」の正しい順番
  3. 「健康経営=健康管理」という誤解を解く
  4. まとめ

1. 溢れる指針とガイドライン。自社の立ち位置はどこか?

企業の持続的な成長が重要視される中で、経営陣や担当者の前には様々な指針やガイドラインが溢れています。

健康経営ガイドブック、人材版伊藤レポート、ISO30414など、省庁や国際基準が別々にガイドを示しているため、社内でも「それぞれの指針・ガイドへの対応別の組織」として、「サステナビリティは経営企画」「人的資本は人事」「健康経営は総務(安全衛生や産業保健の担当)」と縦割りのサイロ化が起きていないでしょうか。

根本にあるのはすべて「人を大切にする経営」です。ここを連動させなければ、本質的な企業価値向上にはつながりません。

2. 「人を大切にする3つの経営」の正しい順番

これら「人を大切にする経営」には、明確な構造と順番があります。

サステナビリティ経営・ウェルビーイング経営(ESGのS: Socialの部分):

企業が中長期的に社会とどう共存し、価値を生み出すかというマクロな視点であり、全体の目的と究極の基盤です。

この段階では、健康な状態の習慣化(Well-being、ここには社会的な健康も含む)によって、社員のワーク・エンゲージメントを高めることが企業の持続的な成長につながります。

これは福利厚生や企業の社会的責任といったメセナ的な要素ではなく、「企業価値向上のためのウェルビーイング」です。

かつて、労働力(人数×時間)を投入すればするほど生産性が上がるという状態では両者はトレードオフでしたが、労働人口自体が減少する現在は、「ワーク・エンゲージメントと生産性は両立する」という考え方が前提となります。

人的資本経営:

経営戦略の達成に必要な人材ポートフォリオを形成し、そのインプットとアウトカムのつながりを説明する階層です。

ISO30414の中身などを見ても分かるように、この次の健康経営という強固な土台の上に、自社の経営戦略と人事戦略の統合(経営戦略と人材ポートフォリオを合わせる)による成長戦略を実現します。

健康経営:

経営方針を現場で機能させるための実践と土台づくりの階層です。

健康経営の段階で、社員のワーク・エンゲージメントを高める(プラスを増やす)ための施策を展開することで、企業風土(健康風土)を醸成します。

加えて、以前からあった産業保健の取り組みも活かして、プレゼンティーイズムやアブセンティーズムといった損失を防ぎます(マイナスを減らす)。ここがすべての人的資本投資の土台となります。

3. 「健康経営=健康管理」という誤解を解く

健康経営の取り組みを紹介しているAction健康経営でも、「健康経営とは」として次のような図示をしています。

この図では、健康経営は人的資本投資の一部として、従業員等の活力(ワーク・エンゲージメント)を高めることで生産性をアップし、業績向上・企業価値向上につなげるという流れを説明しています。

このことからも、健康経営とは単なる「健康診断の受診率向上(健康管理)」ではないことがわかります。

企業価値の向上(経営方針の実現)という最終目的地に向かうための、従業員の活性化と「健康風土」の醸成に向けた人的資本投資なのです。

従業員が心身ともに健康であり、かつワーク・エンゲージメント高く自律的に働ける環境(社会的な健康)があって初めて、経営戦略は実行に移されます。

4.まとめ:

健康経営は、労働安全衛生法などの法令遵守を目的とした「守りのヘルスケア」だけにとどまりません。

自社のパーパスや経営戦略を達成するために、従業員という無形資産へ投資する「攻めの経営」です。

まずはこの構造を経営層、企画、人事、産業保健の全員で共有することが、本質的な健康経営への第一歩となります。


次回は、【設計編】として健康経営の設計図である「戦略マップ」に焦点を当てます。

多くの担当者を悩ませるこのマップが、実は優れた「経営ツール」の集合体であることを読み解き、他社のマネではない「自社独自の戦略マップ」の描き方を解説します。

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